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老人ホーム入居時の賃貸退去トラブル!「原状回復義務」の思わぬ落とし穴と専門家連携の重要性(老人ホーム探しに関する相談の現場から)
老人ホームへのご入居が決まり、現在のお住まいを引き払う際に、賃貸住宅にお住まいだった場合、大家さんへお部屋をお返しする必要があります。この退去時、思わぬトラブルに発展しやすいのが「原状回復義務」です。
「原状回復義務」とは?知っておきたい基本と注意点
お部屋に目立った破損がなければ問題ありませんが、もし不注意で設備を壊してしまったり、汚してしまったりした場合は、この「原状回復義務」に基づき、修繕費用の負担を求められることがあります。
一般的に、通常の使用による自然な劣化や故障については、借主が修繕費用を支払う必要はありません(契約内容によります)。しかし、借主の不注意や故意による破損と判断された場合は、その修繕費用を負担しなければなりません。
敷金・礼金ゼロ物件の落とし穴
賃貸契約時に「敷金」を預けていた場合は、修繕費用が発生しても敷金から差し引かれるため、持ち出しが少ない、あるいはゼロで済むケースもあります。しかし近年増えている「敷金・礼金ゼロ」の物件では、退去時に修繕費用の負担を求められた場合、その場で高額な支払いを求められる可能性があります。
数万円程度ならまだしも、10万円を超えるような請求は、年金生活が主となる高齢のご利用者様にとって大きな経済的負担となります。
ご利用者様の不安を解消するために私たちができること
先日、私たちがご支援させていただいたご利用者様も、賃貸物件の大家さんから修繕費用の指摘を受けそうな状況で、金銭的に余裕がなく、また大家さんとの交渉も苦手とされており、大変ご心配されていました。
私たちの仕事は、老人ホームのご紹介や入居支援が主であり、退去時の具体的な交渉を代行することはできません。単なる退去の立ち会いであればお手伝いできることもありますが、費用の負担に関する交渉に介入することは、専門外であり、法的な問題も生じる可能性があります。これは、ケアマネージャーさんや医療ソーシャルワーカーさんも同じだと思います。
しかし、ご利用者様が言われるがままに不当な費用を請求されたり、退去後も頻繁に大家さんからの連絡に悩まされたりすることは、老人ホーム入居後の新しい生活の安定を著しく阻害してしまいます。
そこで今回、私たちは司法書士さんに交渉の窓口をお願いすることにしました。
専門家連携の力:ご利用者様の心理的負担を軽減する
司法書士さんには、法的な視点から「支払う必要のないもの」と「支払う必要があるもの」を明確に整理していただき、必要な支払いについては誠実に対応する方針で進めています。
このような専門家を介した交渉窓口を設けることで、ご利用者様の心理的な負担は大きく軽減されます。不必要な支払いを防ぎ、スムーズな退去を実現することは、ご利用者様が安心して新しい生活をスタートするための重要なステップです。
私たちは、このように他分野(特に士業)の専門家との連携に力を入れています。ご利用者様一人ひとりの状況に合わせ、最適なサポートを提供できるよう、これからも根気強く連携体制を強化していきます。