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少し「こだわり」がある、ご相談者の施設の見学をお受けして(老人ホーム探しに関する相談の現場から)
この度の相談者さんは、他の紹介会社さんを通じて以前から、老人ホームを探していたようですが、なかなか思うところが見つからないので、私どもにも相談があった方です。
お話をお聞きすると、施設を探すにあたっては、いろいろと拘りが感じられ、それを全て加味してしまうと、なかなか見つからない様です。
今回は、特に強い希望のみをお聞きして、そこを集中的に検討した方が良いと感じましたので、一度、お話を丁寧にお聞きしてみました。
すると、ご本人の希望する一番のこだわりは、「部屋の明るさと広さ」あるいは「明るい雰囲気の部屋」であることを掴みました。
その他にも、「場所」や「地域」などが当初は、お話しに挙がっていましたが、よく整理して行くと、それは、「ご家族(親族)」の意向であり、ご本人の拘りではないようです。
いままで、6件以上の老人ホームを見学して、最終的な決定に至ってないことを考えると、今回も、条件の全てを満たすことを期待させて見学をしても、良い方向に進まない様に感じました。
ご家族さんも、なかなか行き先が決まらないことに不安と苛立ちを感じているようです。
そこで、ご家族さんともお話しし、「場所(エリア)」の優先順位を少し下げて、実際に生活するご本人の希望を最優先で検討して頂けるようにお願いしました。
ご家族さんも、かなりの件数を検討してきたのに思う様に決まらない経緯もあり、「本人が納得するところなら、それで良い」と私どもの提案に同意して頂けました。
次に、今まで見学してきた施設について、質問してみると、どうやら「住宅型」有料老人ホームばかりを見学してきている様でした。
また、場所も利便性を優先してのことで、大阪市内の中でも中心部に近く、駅にも近いところを見学してきておられました。
見学した施設を参考にして、ある気付きを得ました。
まず、ご本人は、部屋の広さに拘りがある発言していますが、「住宅型」は、平均的に居室面積が15㎡以下であることが多く、部屋の広さには期待が持てません。
つぎに、利便性の高い中心部は、施設の周辺に建物が密集しており、「採光」が十分で無く、また居室の窓を開けても、「圧迫感」を感じてしまう可能性があるのではないか?
ご本人が期待する「部屋の明るさと広さ」または、「明るい雰囲気」の居室を優先して検討するのであれば、少し不便でも周辺に建物が密集していない郊外地の方が良いのではないか?
そこで、今まで見学したことが無かった、居室の面積が18㎡以上あり、居室にキッチンがある「サービス付き高齢者住宅」を検討候補にあげました。
この施設は「バルコニー」がお部屋にあり、認知症が無い方であれば、自由に利用することが可能です。
東向きで採光も良く、周囲に建物が密集しておらず眺望が抜けています。(但し、少し辺鄙に感じますが)
バルコニーに出れば、居室にいながら「外の雰囲気」を感じることが可能です。
もう既に複数の施設を見学してこられた経緯がありましたので、まずは、この1件の施設を見学し感想を聞いて、必要に応じて他を検討する方針としました。
すると、意外でしたが、ご見学の結果、ご本人さんから、「この施設でお願いしたい」と自ら発言されました。
念のために理由を聞いてみますと、やはり、居室空間の広さ、遮られない眺望が良いと感じたようです。
駅から徒歩15分はかかりますので、決して便利とは言えないのですが、ご家族さんも今まで、一度も自分から同意したことがない、ご本人が自分から、「ここでお願いしたい」と発言されたことに驚かれていましたし、多少不便でも生活をするのは、本人だからとご理解を頂けたのです。
老人ホームをお探しする際には、いろいろな希望や条件が出ることがあります。
しかし、その全てを受容できる施設は無いことも多く、この場合は優先順位をつけるか、あるいは、「できること」と「できないこと」を分類して、いわゆる「希望の交通整理」が必要になります。
いくら、親切で丁寧で、優しくても「行き先」が決まらなければ、老人ホーム探しの専門家として、仕事をしたことにはなりません。
また、不必要に多くの施設見学に連れまわし、ご家族や本人の時間を奪うことになってしまいます。
きちんと、ポイントを押さえた施設を数件見学して、比較して頂く必要があると思います。
意義のある見学をして頂くためにも、
「よく聞いて」
「仮説を立て提案し」
「根拠と意見を述べることができる」
老人ホーム探しの専門家としての仕事をしなければいけないと改めて感じました。